収録されているエッセイ&論考のなかで一番歯が立たないであろうと思っていた日夏耿之介の「『高野聖』の比較文学的考察」が意外と読みやすかった印象。
おそらく、その前にある前田愛の「獄舎のユートピア」で慣れない単語に苦戦していたからだと思われます。
それにしても、あの日夏耿之介が、あの泉鏡花を考察する過程で、あのオウブレ・ドウルヴィリィ(バルベエ・ドルヴィリ)が出てくるとは思いませんでした。
ライトな幻想文学読者ですが軽く興奮してしまった。
で。
日夏耿之介記すところの『罪障冥加』をもう一度読みたくなって、本棚を引っ掻き回して取り出した文庫本がこちら、「怪奇小説傑作集4フランス編 青柳瑞穂・澁澤龍彦訳」創元推理文庫。
『罪障冥加』という祈祷のごとき名称から『罪のなかの幸福』というちょっとリリカルですらある名称になっています。
怪奇、という要素を求めると拍子抜けするかもしれませんが、二人の女性(にょしょう、と言いたい)には心惹かれるものがあります。
『死女の恋/ゴーティエ』も好きです。
これは岩波版もありますが、私はこの青柳瑞穂訳の方が好み。タイトルからして『死霊の恋』というより『死女の恋』って方が響きます。私のドシロウト感性には。
澁澤龍彦の解説も読み応えたっぷりで、これを読んであれも読みたいこれも読みたいと頭の中で想像を膨らませるのはたいそう楽しいです。