読了。正史の裏の一つの世界、一つの歴史。
安徳天皇を巡る二部構成。
一部は、若き三代将軍実朝とその忠実な従者を主軸にし、吾妻鏡や金槐和歌集を踏まえつつ妖美でありながら諦観に満ちた静謐な世界。
二部は、クビライに仕えるマルコ・ポーロや最後の南宋皇帝が体験する、蜜色でもあり黄金色でもある黄昏の幻想。そして一つの王国が炎上する世界。平氏と南宋。場所こそ違えど、同じ海の上で繰り返される滅亡劇。
二人の少年皇帝の交流が淡く純粋であればあるほど、滅亡の様が鮮烈。
一部が静謐であればあるだけ、二部が劇的。
実朝を包む冷たい炎と、船団を焼き尽くす炎の対比。