部屋の窓際

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ラクガキ&読書メモ「安徳天皇漂海記」

スケッチ/手向けの花

 

 

安徳天皇漂海記  宇月原晴明」中公文庫

読了。正史の裏の一つの世界、一つの歴史。

 

安徳天皇を巡る二部構成。

一部は、若き三代将軍実朝とその忠実な従者を主軸にし、吾妻鏡金槐和歌集を踏まえつつ妖美でありながら諦観に満ちた静謐な世界。

二部は、クビライに仕えるマルコ・ポーロや最後の南宋皇帝が体験する、蜜色でもあり黄金色でもある黄昏の幻想。そして一つの王国が炎上する世界。平氏南宋。場所こそ違えど、同じ海の上で繰り返される滅亡劇。

巡り巡って高丘親王と、親王をも包む神代の存在が登場。

 

二人の少年皇帝の交流が淡く純粋であればあるほど、滅亡の様が鮮烈。

一部が静謐であればあるだけ、二部が劇的。

実朝を包む冷たい炎と、船団を焼き尽くす炎の対比。

 

安徳天皇漂海記 (中公文庫)

安徳天皇漂海記 (中公文庫)