シェルドン・テイテルバウム&エマヌエル・ロテム 編/中村融 他訳
巻末に『イスラエルSFの歴史』という、かなり噛みごたえのある解説もあるアンソロジー集(原書では巻頭にあったらしい。その他、完訳ながら構成に移動がある旨、訳者の後書きにあるが、確かに親切設計だと思う)。
この解説だけでも大変に熱意のこもった本だというのは理解できるのだが、私にはそれぞれの物語を追うだけで精一杯でした。
特に気に入ったのは、
絵を感じる『オレンジ畑の香り』ラヴィ・ティドハー
カタストロフィを感じる『アレキサンドリアを焼く』ケレン・ランズマン
詩情を感じる『星々の狩人』ナヴァ・セメル
ゴシックを感じる『エルサレムの死神』エレナ・ゴメル
他に。
『スロー族』ガイル・ハエヴェンは、古典的ともいえる展開でありつつ、現在の様々な状況のためか暗澹たる気持ちに導かれる。
『夜の似合う場所』サヴィヨン・リーブレヒトは、夢中で読み耽りその終盤に予想はしていたものの、これまた暗澹たる気持ちに取り残される。これはまさに旧約じゃないか、と思うのは知識の薄い異文化人の思い込みかもしれない。