「雪屋のロッスさん いしいしんじ」メディアファクトリー
久々に図書館本。
凝り固まったものをほぐすつもりで、ちょっとシンプルで洒落た童話のような作品を、と思い込んでいたら涙腺を突かれる。
なんでもない、あたたまる、痛快、哀しい、…といった様々なことを淡々と綴った掌編集。慈しむモノだけでなく、いたぶるモノもいる世界。
この空気、「たんぽぽのお酒」のブラッドベリに近いものを感じる。
あまりにさらりと記憶の中の沈めたところに触れてくる。
陳腐な表現だけれど、とても優しくて残酷だ。
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積んどいた本。
吸血鬼・幽霊譚などの平井呈一が翻訳した西洋怪奇小説13篇と、付録として生田耕作との対談やTHE HORRORへの寄稿文、その他書評たエッセーなどを収録。
オトラント城と異なり、こちらはどれもスルスルと読了。
特に強烈なのはタイトルからして『のど斬り農場 J.D.ベリスフォード』。
ほかに雰囲気が印象的なのは
『ライデンの一室 リチャード・バーラム』
『死者の咲顔 F.マリオン・クロフォード』この辺りが特に好みでした。
『カンタヴィル幽霊 ワイルド』を最終に置いたことに茶目っ気を感じる。
『サラの墓 F.G.ローリング』の記述形式はブラム・ストーカーのドラキュラの影響なのか、当時の英国の様式なのか。この辺りのことが高山宏の著作に触れてあったのに、ポンコツの記憶力なので思い出せない。