澤村田之助復帰を背景に戯作者見習いの少女が謎解きに挑む「狂乱廿四孝(完結)」と、その後の活躍を描くちょっとファンタジーも混ざった「双蝶闇草子(未完)」の二篇が収録。
舞台芸術という分野を好きになるよりも前から、歌舞伎という形態とその周辺の歴史諸々に多大な好奇心と、僅かな知識を抱え続けておるわけですが。
なかでも、心惹かれずにはいられない【三代目澤村田之助】というキーワード。
さらに幽霊画とか連続殺人とか、滅びゆく江戸情緒なんて謳われたら読むしかない。
ワクワクして読み、読み耽り、最後のページで頭を抱える。
続きを…!続きをくださらんか…っ!
未完と承知だったけど、あんなところまで行って現実に引き戻されるとは。
最後の一文がまた実に、こちら側(読者)をぎゃふんと言わせる文章で…。
ここで終わり!?という衝撃は、「リ●グ」の途中削除されたビデオテープを見てしまった主人公なみな気分。別に呪われないけど。
田之助復帰の他にも八代目団十郎切腹事件も絡めた一作目を読み、二作目は折角の続編だけど、なんかファンタジー(?)も混じってるしどうせ未完だし、まあ、ちょっとさらっと目を通すだけかな、と思っていたはずなのにどっぷり堪能です。
歌舞伎に興味がある、時代小説が好み、江戸の風情が好ましい、河鍋暁斎に興味がある、どうせ読むなら怪談じみた殺人事件物、などといった嗜好をこれでもかとくすぐられました。
戯作者見習いのお峰のその後が気になるし、本来の構想は三部作と知って、最終的な真の黒幕はやはりあの人物なのではないのかと妄想中。
それにしても、この世界の三代目田之助は今まで読んだなかで一番穏やかな印象。
あくまで三代目田之助比(?)だけど。