先日、WOWOWさんで三本連続放送していたのを録画。
とりあえず納まった年度末テンションで三夜にわたって視聴。
順番は放送順(録画順)で下記の通り。
作品感想なので敬称略にしております。
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原作が、北斎やお栄のドラマティックかつミステリアスな人生!…などというものとは全く無縁で、淡々と江戸末期の日常を描いていた短編集。
あれをどうやって一時間以上にまとめるのだろうと思っていたので、上手く繋げるなあ!と素直に感心。あの淡々さを損なわず90分はすごいと思う。
欲を言えば、全体的に雰囲気が少しばかり現代的か。
原作大好きなので、あのエピソードはないのかと残念に思った箇所も数カ所あるのですが、それはこの映像で観てみたかった、という期待でもあります。
続編はありえないけど、深夜枠で短編集とか希望。
蛇足でもう一つ。
少し気になったのは、声。
あくまで私の印象なのですが、棒読み…とまでは言わないまでも何か映像との違和感がありました。好きな俳優さんばかりなんだけど。
すっと目と耳に馴染んでいた人物を調べると本職の方ばかりだったので、これがプロか!と思った次第。ただの思い込みかもしれませんが。
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「HOKUSAI」
キャスト:<葛飾北斎>柳楽優弥、田中泯 <柳亭種彦>永山瑛太 他
一本目がカラっとした明るさがあったためか、こちらは陰陰滅滅と言いたくなるような。特に柳亭種彦の辺り。ちょっとした怪談。
時代考証とか史実云々とかそういったものは、この作品はこういう世界観なんだな、と思って観るので無問題。ただ、なにかこう…現在の世相とか社会批判を強引に盛り込んだような気が無きにしもあらず。主義主張をするな、というのでなく。
視点が途中でズレていく感じにモヤモヤが生じました。
せっかく柳楽優弥&田中泯でなかなかにエキセントリックな画狂人を映像化しているのに、余分な重石が乗っかっちゃった感あり。
美術はたいへん美しいです。藍のところとかゾクゾクします。
こういう世界、とわかりやすく示してくれたのが歌麿の玉木宏。斬新すぎるファッションで、「あ、こういうのがアリの世界軸なのですな」とすんなり馴染みました。
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「北斎漫画」
監督&脚本:新藤兼人
キャスト:<葛飾北斎>緒形拳 <曲亭馬琴>西田敏行 <お栄>田中裕子 他
前二つに比べるともう、ギラギラこってりべっとりって印象。やたら肌色率が高いのですが、原作もこうなのでしょうか?
生命力! → 裸!っていう映像制作の時代背景(1970〜1980年代)だったんだなあ、というのは思い込みか。
実際、作品はかなりパワフル。語弊を恐れず言うと、猥雑さの生み出す活力。
蛸と海女のくだりは思わず失笑(正しい意味で)。春画は笑い絵だと杉浦日向子さんの著作で教わりましたが、これは確かに思わず笑ってしまう。
それにしても樋口可南子は美しい。
クセが強いっていうか、灰汁が強い。強いというか、もはや灰汁しかない。
緒形拳の鉄蔵(北斎)は我武者羅。小娘から老女まで演じる田中裕子すごい。
周囲もまた濃いんですが、歌麿が愛川欽也っていうのが個人的にはインパクト大でした。
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三作品の大まかな印象は、
絵師北斎と頭角を現し始めたお栄の、絵を描きつづける日常の断片。
自分の「画」を求めてぶつかりまくり極めつくさんとする、芸術家的北斎。
行き場の無い熱情が先か描かずにはいられない衝動が先か、絵筆バカ一代!な北斎。
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昔NHKでやってた「眩(くらら)」もあったな、と思いましたが、目がショボショボしているので今回は見送り。
そしてこちらの原作に立ち戻る。
個人的名作。このなんとも言えない空気感はクセになります。
好みがあるので、強くオススメ!とは絶対 言えない 言わない。
名作とかクセになると言いつつ、私は初読時には「ふ〜ん」としか思わなかったのですが。暇つぶしに何度か手にとってるうちに、魅力にようやく気がついた次第。
余白の美というか(決して画面の白さではなく)、語らないことで溢れている情感というか。