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読書メモ「幻想と怪奇3」

 

 

「幻想と怪奇3 平井呈一と西洋怪談の愉しみ」新紀元社

 

私の中では〈西洋怪談〉〈ヴィクトリアン〉という言葉が示す領域は、だいぶこってりと混じり合っているようです。

それぞれの特集に組み込まれた作品がシャッフルされていたとしても、気にならないというか気づきもしないだろうという、編集者泣かせの読者ではありますが、面白かった!

 

 

全体的に怖さよりも古色蒼然という持ち味が重要なのかな、と。

最近得た付け焼き刃で言うならば、ホラーよりテラー。

 

平井呈一名訳選は怖さよりも語りの魅力。特に「池の子たち アーサー・マッケン」は語り重要。そっと挟まれる池の描写。「消えた心臓 M.R.ジェイムズ」と「謎のクリーオール事件 小泉八雲」は、素直に怪異譚の愉しみ。

怪談つれづれ草は、まさに古色蒼然。伝統的味わい、とでも言うべきか。

 

英国怪談精華選は、エンタメ色を感じる。

「幻のニーナ F.マリオン・クロフォード」や「屋根裏部屋の声 A.M.バイレジ」などは、このテーマを現代で起承転結の構成した場合は悲惨な結末になるのではと想像するが、救いがあって安堵。一番エンタメ要素豊富なのは「非聖遺物 M.P.デア」。

「白い蛾 シンシア・アスキス」は、なんというか。確かに怪異譚ではあるし、ある意味コメディでもあるが、サイコ要素も読み取るのは強引か。

 

現代西洋怪談集は、恐怖の焦点が移行した感。

「ジャスパーはそこにいる ラムジー・キャンベル」「闇に叫べば ジェマ・ファイルズ」などは、心理的精神的な現実的恐怖。私が現代の情報に浸かりすぎているせいか。

題名からして拒否反応が出るし(ある意味言いがかり)、自分の想像力をシャットアウトしたい展開の「ミスター・ケッチャム マイクル・チスレット」は確かにマッケンの系譜だと思う。ウィッカーマンやミッドサマーな世界を連想。

 

エンタメといえば、ショートショートの「紙の城館 井上雅彦」「白樺の家 奥田哲也」が読みやすい安心感。やっぱり怪談怪異譚といえば屋敷要素が欲しいのは日本人の感性か。そこも英国と近いのだろうか。

 

エッセイ「平井呈一とその時代 紀田順一郎」は必読。