「不死身の戦艦:銀河連邦SF傑作選」創元SF文庫
J.J.アダムズ編/佐田千織 他 訳
星間国家をテーマにした16編のアンソロジー集。
<銀河連邦>といえばスペース・オペラでしょう!という連想の持ち主なので、AIロボット傑作同様に幅の広さに振り回される。
確かに、星間、という枠組みさえあればどんな物語も包含可能。
今まで読んできた<パワードスーツ><AIロボット>と共通項を持つ作品もあり、そのものズバリという作品以外に、このテーマで敢えて選ばれたこの作品、というものに出会えることがアンソロジーの面白さだなと思った次第。
という、優等生的な発言もしつつ。
単純にワクワクしながら読了。
星と星、銀河と銀河を物質的に移動できる技術が生まれるくらいなら、その前に物質的なものに拘らない技術が出来上がっちゃうんじゃ無いか?などという疑問をすっ飛ばす魅力に溢れた銀河連邦。スペース・オペラ。
広大すぎる世界の大冒険、巨大な展開点、歴史絵巻という粉飾可能な星間戦争などなど。そして広大すぎる世界で描かれる小さな生活。
SF、だからこその世界。
どの作品も面白かったのですが。
『監獄惑星 ケヴィン.J.アンダースン&ダグ・ビースン』名詞の付け方に痺れる。
『不死身の戦艦 G.R.R.マーティン&ジョージ・ガスリッジ』女王様と下僕達。
『還る船 アン・マキャフリー』こちらはレイディとナイト。
『巨人の肩の上で ロバート.J.ソウヤー』こういうSFはいつまでも続いて欲しい。
『星間集団意識体の婚活 ジェイムズ・アラン・ガードナー』お洒落なコント。
など、いろいろな快感を得られる一方で、
『戦いのあとで ロイス・マクスター・ビジョルド』これこそ普遍のテーマ。
『エスカーラ トレント・ハーゲンレイダー』繰り返される誰かの過ち。
などは小さくえぐられるものがあります。
カルタゴ 滅ぶべし ジュヌヴィエーヴ・バレンタイン』は、広大で煌くゴドーを待ちながらか?と面白がることも可能な一方、二重三重の意味で突き刺さるものを感じました。
特に好きなのは2編。
『ジョーダンへの手紙 アレン・スティール』ダンセイニの香りも感じる。
『ゴルバッシュ、あるいはワイン-血-戦争-挽歌 キャサリン.M.バレンテ』大好き。
本は違う世界に連れて行ってくれる、という実感を得られる幸せよ。
巻末にかなりシンプルな出典一覧がありますが、そのシンプルさをひっくり返すような謝辞は、居酒屋で子供の頃観ていたテレビ番組で盛り上がってしまう会話を聞いているようでニヤニヤしてしまいます。
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キャサリン.M.バレンテといえば。
「孤児の物語1、2」東京創元社が好きなんですよ。大きさに購入を躊躇っていたら絶版という、本買いあるある。
手元に置くには古書しかないかと思ってはいるのですが、あの「琥珀捕り」を文庫化した創元さんならもう少し待てば文庫化チャンスあるかも!と期待に念を込めて待っております。