本棚の乾燥剤をせっせと交換中。
【一年に一度も読まなかった本は処分する宗派】には入信できそうもない。
窓の外のカーンと青い空を眺めながら、風の通るほどほど暑い室内で、本を並べ替える幸福。終了した時には何故か溢れるというオチも毎度のこと。
二三年に一度は再読する本を、こういう機会に拾い上げたりする。
これからの季節に備えて(?)探偵小説を数冊手前に配置換え。
夏といえば探偵小説。暑いといえば探偵小説。
精緻を極め虚構の限りを尽くした探偵小説(?)を読むと、理解しようと頑張るせいか脳にすら熱が籠りそうな錯覚。
理解しようしていたはずが、幻想に振り回される酩酊感にすり替わり、見知っているような見知らぬ地点にたどり着くのがポイント。
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特に好きなのが、巡り合った順に以下三冊。
この本で匣(はこ)という漢字を知った思い出。
あらゆる章がこってりと濃い。知らない世界がこれでもかと繰り広げられ、不思議な方向に収束したかと思うと、次の章では破壊されまた違う世界が生成されていく。
終点で、これはある意味ドグラマグラか?と思ったのが私の理解力の限界のようです。
とにかく毎回、愉しい。
ノベルス版で出会って興奮して読んで、一度気の迷いで手放し、新装版を再び購入。
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何やら素敵なタイトル、そしてどこかで目にした名前?と手に取りどっぷりハマる。
情報量とか、雰囲気とか、登場人物とか幻想性とか色々詰め込まれた〈たまらなく好きな要素〉をうまく表現できそうにない。とにかく好き。文章が好き。文体が好き。
もはや好きというか、美味。
全体に漂う聖と俗の混じり具合が、醗酵の役割をしてるのか。
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匣と虚無に導かれて「黒死館殺人事件」へと到る。
最初から耳慣れない単語の連発という怒涛の情報量でクラクラする。
やたら画数の多い漢字の脇に横文字ルビという視覚的インパクト。ストレートな伝達というものが皆無ではなかろうかという登場人物たちの会話。
衒学趣味、と叩っ斬るか夢中になるか。私はもちろん後者です。
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やっぱり【一年に一度も読まなかった本は処分する宗派】なんぞには入信できない。