部屋の窓際

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読書メモ「幻想と怪奇7」

 

 

「幻想と怪奇7 ウィアード・テールズ 恐怖と冒険の王国」新紀元社

 

ウィアード・テールズ」という単語(付随してパルプマガジン)を荒俣宏著作で幾重にも擦りこまれているので、その名を聞くと心ときめく。

研究本を通してしか知らないのですが、ケイブンシャの大百科のようなワクワクとドキドキといかがわしさのお祭り的イメージ。買ったらお母さんに怒られちゃうやつ。

 

 

冒頭、編集室による『『ウィアード・テールズ』—ある雑誌の歴史と表紙画家たちの横顔』からして面白い。表紙絵が並ぶだけで楽しい。なんだったら表紙絵を網羅して、この特集だけで一冊の本が欲しい。

ブランデージとフィンレイは実によく耳にしますが、ランキンの作品も好み。

 

Weird Tales Trioは、さあどうだ!という三人の作家。

ラヴクラフト、C.A.スミス、R.E.ハワード 。

スミスとハワードの「アンポイの根」と「消え失せた女たちの谷」を連続で読むと、ヒロイズム的行動がある意味それぞれ真逆な結果になるような印象。

いろいろ問題作ではあるものの、やはり「レッドフック街怪事件」が突出。

前者二作が、ここではない何処かでの不思議な冒険ファンタジー要素なのに対し(コナンのマッチョイズムも素直にファンタジーとして見る派)、ラブクラフトの「レッドフック」は、すぐ隣にある真実に気づけ愚者ども!といったような木霊が。木じゃないけど。都会だけど。

 

Monster, She Wroteはヒロインの手記、という趣旨だと思ったのですが、編集後期を見ると女性作家の章。

「レオノーラ」は古典的な題材でお馴染みのストーリーですが、車、がとても妖しく効いている印象。「魔の潜む館」はサイコも混じったゴシックホラー か?未だにホラーとスリラー がよく分かってないんですが。ちょっとブロンテ姉妹の系譜も感じました。

タイトルが強烈なインパクトの「殺人スチーム・ショベル」。ヒロインの強かさもなかなかですが、単純なストーリーなんだけど憎めない懐かしさ(?)。ちびっこの頃テレビで見た映画を思い出します。ザ・カーという映画。

 

Short Short Storiesは、伝説の雑誌への思慕を寄せた日本人作家の短編二作でしょうか。「降誕祭」は、なんとなく分かっているオチだけど来るなよ来るなよと思いながら読むタイプ。「25セントのホラー・ショウ」はオチが少し予想した軌道を外れ、ホラーなんだけどリリカルな印象。ちょっとブラッドベリに近いかも。

 

Legendaries of the Pulp Magazineは、シーベリー・クインは知っていましたが、ニクツィン・ダイアリスは初耳。シーベリー・クインというと、某文庫の表紙インパクトが強くて今回の「道」は驚くほど子供に聞かせて安全(?)なおとぎ話。

「うなばらの魔女」は、何度もじっくり読みたくなる美しさ。解説によると、作者本人もかなりミステリアス。

 

Le Forum du Roman Fantastiqueは寄稿の章。「稲妻マリー(翻訳)」「天使についての試論」「蛙中人」の三作。「天使についての試論」がインパクト大。淡々としてますが、ひっそりとした生々しさと禍々しさを感じます。

 

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あれ?思ったほどギトギトでギラギラなドギツイ読後感じゃないなと思いましたが(パルプマガジンという単語に寄せる過剰な期待)、初めて耳にした頃よりも時を経て、自分がそこそこスレただけな気もします。