夏の暑さでぼんやりと回想。
無駄に長い雑文です。
ポーの「黄金虫」財宝の内容目録(あれはまさに目録)にワクワクする。
子供のときから、暗号解読部分よりも大好きだったと言うと、我ながら物欲の塊のようです。否定もしないが、単にキラキラしたものに惹かれるのだとも思う。
私の感受性が鈍いだけかもしれないのですが、ポーの記す宝飾品は高価であるという一点だけで、色彩や形状的なイメージの印象が薄い。
それこそ、微に入り細に入りだったフローベールの描く「サラムボー」とは対照的。読者も陶酔するが著者も酔っているのでは?という描写に対し、ポーの記述は作品効果を最優先とし無駄を省いている硬質な印象もある。
だからこそ、黄金虫の宝箱はキラキラして凄いんだぞ!と、子供心にストレートに食い込んだと思うのですが。
面白いことに、各社によって財宝の内容に僅かな差異があったりしますが(翻訳によるもの?底本によるもの?)、ワクワクに変わりは無い。
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という訳で。
初めて読んだポー作品が「黄金虫」と「盗まれた手紙」。
親戚からお下がりでもらった子供向けの文学全集の端本が3冊あり、それが出会い。
前にも書きましたが、うちは裕福ではなかったので子供の頃に読んだのは全て図書館&図書室での貸し出しか親戚のお下がり。そして年に二回だけ買ってもらえる本のみでした。
残念ながら処分されてしまったこの本の記憶は、
外観はいかにも全集!といった立派な造りでクリーム色、表紙が名画。
一冊に3、4作品が収録されていて
- 「若草物語」と「怪傑ゾロ」が同じ本に収録されていて連続で何度も読んだこと。ゾロの文章が今思うと講談調?小気味が良かった。
- 「黄金虫」と「盗まれた手紙」と「ルコック探偵」にも夢中。同じ巻だったと認識。土曜ワ●ド劇場が怖かったくせに、一番読んだのは「ルコック探偵」。
- 「家なき子」と「家なき娘」も同じ巻。ちょっと悲惨な感触を得た「家なき子」に比べ、無人島サバイバル感(今風に言えば、公園でキャンプ?DIY?)でワクワクのある「家なき娘」に夢中。
以上の記憶で調べた、というかネット検索。
古本屋さんの画像や、似たような質問している人や、リストをアップしている有難いサイトを読み耽ったところ(この時点で合計5時間以上が寄り道に費やされる)、
少年少女世界の名作文学/小学館 全50巻
と判明。1964-1968年で月一配本だったらしい。
生まれるだいぶ前だった。そして我が家にあった時には函は無かった。
「若草物語」と「怪傑ゾロ」を連続で読んでいた記憶に間違いはなく、同じ巻に収録。
満足したのも束の間、同じ巻に「黄金虫」「盗まれた手紙」もあったと知る。
「こがね虫」表記なところと表紙の踊り子@ドガが思い出をくすぐる。
舐めるように読んだはずなのに、同時収録だったボードレールの記憶が無い。お子様すぎて、詩など理解出来なかったと推測。「昆虫記」は、そういえば●転がし系の内容を読んだような。
じゃあ、もう一冊は?と思ったら、「クオレ」の作品名で思い出がぶり返す。
母を訪ねて三千里がまさかの一挿話だったという驚きと、不良少年が最後にお祖母さんを守って死んでしまうという挿話が印象的。
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所持していないので、Amazonさんにある書影を活用。
合本というのも存在したようです。
残念ながら本体の書影はなかった。背表紙とかカッコイイのですが。
古典、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、ソビエト、北欧、南欧、東洋、日本、世界民話伝承の堂々50巻。驚くほど豊富なタイトル。
確か手元にあった本の巻末か付録に全集の内容が書いてあって、北欧神話や騎士物語が読みたかったんですよね…(追憶)。
「三国志」や「太平記」に「ルバイヤート」や「醒睡笑」を併せているところに浅薄ながら、編集の深い思慮を感じます。
二段組とはいえ「白鯨」や「ファウスト」「罪と罰」が他作品と共に一冊にまとまるという凄技。さすがジュブナイル。間違っても馬鹿にしていません。
先人が少年少女向けにきちんとした入り口を用意してくれたからこそ、私は今でも物語を読んでいるので。
と、これだけは曇りなき瞳で言えますが。
欲望に染まりに染まった瞳で眺めると、これは今更ながらに全部読みたい。
まずは全部本棚に並べてみたい。
「ソロモンの洞窟」と「失われた世界」が同時収録ってワクワクしますね。
アルベール・サマンとアルチュール・ランボオとフランシス・ジャムの詩を収録って、なんてハイカラな。ブレイクの詩は「虎よ虎よ」もあるのでしょうか。
リラダン伯爵の作品まであるとは。
監修の筆頭に川端康成の名を見て、じゃあ良い子良い子だけの全集じゃないな!と思ったのは早合点すぎるでしょうか。