部屋の窓際

好きなものについて描いたり書いたり。

4月30(29)日 静馬の涙。松子の涙。


日曜だけど土曜日の日記。
朝は素晴らしく晴れ。午後から曇り始める。終日強風。
ちなみに、日曜現在は超曇天。


例年通りに、大型連休前に連日仕事が祭りと化していたため初日はぐったりして過ごす。
睡眠だけで疲労が取れるわけもなく、洗濯をした後、ノロノロと部屋の掃除をし、全てをやり切った気になって終日ゴロゴロする。
まだまだ休みあるし!という安心感。
ダラダラと過ごしそうな一抹の不安。


朝。キウイとヨーグルト道。びっくりするくらい硬いキウイ。
昼。ざる蕎麦。しらすと薬味を盛った冷奴。ビール。
夜。白米。豆腐とわかめの味噌汁。カツオのなめろう。きゅうりの一夜漬け。めかぶ。


昼と夜の間に豆大福を食う。犬神家の前編見ながら。
夜。犬神家の後編見ながらウィスキーボンボン(なにか懐かしい響き)。



**


犬神家の一族 前後編」令和NHKを観た。
思いつくままに。ネタバレも。無駄に長い。


脚本担当が小林靖子女史と聞いた時点で「なんか、ある」と思ったが、まさに「なんか、あった」。なかなかの改変ぶり。

前編は、かなり忠実に原作を追う展開(そして進行もゆっくり目)。
後編は、原作の要点を自由自在に切り貼り(打って変わって進行が早い)。
最終的には違うものに仕上がっていた。

自由自在な切り貼りではあるのだけれど、手前勝手な創作ではなく、原作の穴を拾い上げて、そこに大きな罅を見出し。独自の解釈を用いて継いで仕上げたような。

切り貼りというとコラージュみたいだが、むしろ継ぐ感じ。金継ぎ。
どろりとした『人間の情』という漆で継いで、目を眩ませる金を振りかける。
犬神家の一族」という大皿を、小林靖子流に金継ぎして見せた感あり。

とにかく後編は展開が早い。金田一の興奮も混じってパタパタと畳み掛ける。
謎解きはじまっても、あのヨキケスが登場しない異色の展開。

佐清くんから語られる静馬くんへの同情と負い目。
静馬くんが歴代稀に見る純真無垢な青年。
松子夫人の執念。
良くも悪くも、市川崑版の哄笑するスケキヨ=静馬の印象が強いため、謎解きの後に持ってこられたヨキケスが陰惨というより悲劇に映る。

あと10分近くあるけど?という違和感。
静馬の遺体があまりに哀れすぎたのもあって、松子夫人の悔恨の手紙的な?と思ったら、いわゆるどんでん返し。

探偵と佐清が対峙した時点でやな予感するが、的中。
真の黒幕佐清説が誕生。確かに、佐清犬神家の一族

しかし、それすらも仮説。
金田一の推理は全て佐清の証言という裏付け、という指摘もある通り、ちょっと突けば崩れる脆さ。あくまでも、仮定の構築。

これが提示されると、え、じゃあ逆にこの人静馬の可能性は?も浮上。
そもそも、佐清と珠代が結ばれればわざわざ殺害の必要ないのでは?


金田一さん、あなた病気です」


黒幕を突き止めた金田一の無力感、とみるか。
佐清の最後の台詞こそ、実は真実とみるか。


今回の令和版は横溝正史を使った藪の中、と一言で済ませきれない後味。
結末の解釈は、いく通りも可能。
誘導に引っかかるようだけど、愛情に飢えた怪物たちの物語、でもあるか。

 


個人的には、今回の犬神家は、静馬の母恋の物語と松子の妄執の物語でした。
どの役者さんも良かったけど、とにかく松子の大竹しのぶさんが凄すぎた。
どの場面切り取っても絵になる。どの場面切り取っても耳に残る。
掴みどころがないところが持ち味と思っていたのですが、凄かった。それしか言えない。


金田一吉岡秀隆さんは飄々として柔らかみがあるのだけど、ここにきてどこか怖い。何か常人とのズレを感じさせる。金田一だけが気がつく齟齬なのか、金田一だけが齟齬なのか。
「獄門島」の長谷川金田一がかなり突き抜けていたのを、吉岡金田一で軌道修正してるのかなあと思っていたら、ここにきて交わるようになった気がする。
私は、あの闇(病み)を抱えた金田一は大好きです。

すっごいどうでもいいことだけど、珠代の古川琴音さん見ると、長野…信玄がらみか!と遊びたくなる。



今回、松子の静馬殺害の場面が無かったのだけど、あの男は化け物だったという松子の鬼気迫る台詞は、憎しみだけでない複雑な感情の爆発だったのではないかと推測。
憎しみだけではない涙も混じっていたのではないか、と思いたい。
静馬は、御伽話だったら救済されているはずの化物にされた王子。
凍った湖面という鏡面化し反転した世界で救済された、と思い込みたい。





ちょうど再読していたため原作の記憶が新しいのと、70年度市川崑版を見直していたこともあって、あっという間に二往復しました。見応えあった。

ピアノが上原ひろみというのはすぐ気づいたけど、あとで曲名を知って呻く。

「Old Castle , by the river ,  in the middle of a forest」

出来すぎか。やっぱりこれはある種の御伽話か。
深読み読書会で指摘されていた、隙があるからこその面白さ、がいろんな解釈を許す作品の強みなんだなとつくづく思いました。

まあ、でもやっぱり諸悪の根元は佐兵衛だよな。



 

 

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アップしようと思ったら、はてなブログがおかしい状態だったのでしばらく放置。
放置している間に、これが目に入って物欲刺激されまくり中。


空が明るくなってきた。