部屋の窓際

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読書メモ「くらげ色の蜜月」

 

 

「くらげ色の蜜月 戸川昌子竹書房文庫

短編集。表紙からして、うわぁ…な予感。中身も概ね、うわぁ…。

収録一作目『隕石の焔』を読了して、かなり辟易。

三作目の『くらげ色の蜜月』でこの系統がずっと続くのか?と当惑。

 

性にまつわること、セックスという言葉をあっけらかんと言い放つこと(本心であれ、建前であれ)こそが、先進的で開放的で革命的で冒険だと認識されていた時代の扇情小説なんだな、と思い込みひたすら読み進めると『蟻の塔』や『ウルフなんか怖くない』辺りから少し違った感触を覚えます。

 

作品の系統が変化したとかではなくて。

露悪的かつ扇情的な小説群から、じっとりと怨嗟のようなものが滲み出てくる感触。

幻想というにはあまりにも極彩色で腥い作品群の根底に、なんらかの虐待、抑圧、虐げられたモノたちの、凝りに凝った呪詛が練りこまれているという感触。

 

社会派小説、という意味ではなくて。

それこそテラーでもホラーでもなく、なにかに対する怨嗟呪詛。

本当に書きたかったのは、これらのことじゃないか?

…というのは私の思い込みですが。

 

どちらにしても、うわぁ…と辟易気味なのは変わらないのですが、『聖女』などは中世の魔女裁判の変化球にも思えました。うわぁ…なんだけど。

 

とにかく収録作がほぼ、こってりと胸にきそうなうわぁ…具合なので、終盤の『奇妙な快楽』『蝋人形レストラン』で、ほっとしたくらい。

作品群に辟易したのも確かですが、この作品群があったからこそ根底の何かに気付けたかもしれません。