「平家物語 犬王の巻/古川日出男」河出文庫
映画の方で気になったので購入。
観阿弥世阿弥を圧倒する道阿弥の華々しい能役者サクセスストーリーかと思いきや、室町になっても源平合戦に連なる因果が巡るファンタジーだった。
タイトルにちゃんとそう書いてはあるが、ここまでとは。
びっくりするほど読みやすいというか、あっという間に読み終わる。
各章が短く、たんたんたたたん!たたたたたん!って感じで物語が畳まれる。
昇華、というよりも幾重にも畳まれ文箱に納められる感あり。
道阿弥こと犬王と、琵琶法師の友魚がダブル主人公。
ど●ろ?とも思ったし、説経節の小栗判官も連想。
読了後はスコン、とした気分。肩透かしと採るか爽快と得るか。
私は、どちら側にも揺れた読後感だった。
疾走感は間違いない。グルーヴ感とでもいうか。
それこそ、琵琶の音と共に朗唱で聴かされれば陶酔するかもしれない。
ただ字を追うだけでは、流れ(リズム)の面白さを逃してしまう気がする。
しかし、流れだけに乗ってしまうと文の底にある何かを掴み損ねてしまう気もする。
未読なのでただの憶測だが、平家物語を訳したことがきっかけで誕生、引きずり出された物語なのか?とも推測。
というわけで、古川訳の平家物語が本棚に手付かずで鎮座しているので読まねば。