部屋の窓際

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読書メモ「須永朝彦小説選」

 

 

須永朝彦小説選 山尾悠子編」ちくま文庫

ユリイカの前にこちらを読了。

「就眠儀式」は所持しているけど、他の作品を読むことができて嬉しい。

そして、ゆっくりじっくり読んでいても、遂に読了してしまったのが寂しい。

異論があるかもしれませんが、中井英夫塚本邦雄の系譜に連なるのではないかと。

 

 

昔は欧羅巴を題材にしていた作品群が好きでしたが(思えば、エリザベートハプスブルク家に興味を持った際、この人の本にお世話になっている)、今は本朝を舞台にしているものにたいへん心惹かれます。

「聖家族シリーズ」「蘭の祝福」も良いですが、「滅紫編」「術競べ」が実に好み。どちらも全体像が別にあるとのことで、国書刊行会さんがうっかりして全集復刊をしないかと深く念じて呪いたい。のろいじゃなくて、まじない。

 

 

塚本邦雄の小説について実に鋭い批評をしていた須永朝彦だけれども、それは自身の作品にも当てはまることであり、おそらく本人も十分承知していたとは思う。

とてつもなく豪奢で華麗なのは、物語の筋よりもそれを形作る一文、一文。

私が物語の妙を感じ取る能力に劣っているだけなのかもしれませんが、濃厚に味わい尽くすのは広がる物語ではなく、目の前にある文章。

その装飾の端麗さ緻密さ、綺羅をまとった絢爛たる文章。

ただ美しい世界を読んで酩酊する。

…その美しさを上手く表現できないので、やたら画数の多い漢字を使用してみましたが。好きな人には堪らないと思います。

 

どちらが優れてどちらが劣るという意味でなくて。

文体のせいか、中井英夫作品よりは陰惨さがドライに感じます。

文体のせいか、塚本邦雄作品よりは妄執に軽やかさを感じます。

ともかく、美しいことには間違いありません。

 

山尾悠子さんが解説でも述べていますが、旧仮名遣いでの出版が嬉しいです。