「創られた心 AIロボットSF傑作選」創元SF文庫
ジョナサン・ストラーン編/佐田千織 他 訳
16篇の短編で構成されたアンソロジー集。
〈AIロボット〉というジャンルか、とサラッと流して読み始めたものの、それがとんでもなく広範囲であるということに気付く。
ハートウォーミングな掌編だったり、ハードなバイオレンスだったり、ちょっとしたビジネス論?SFというか物語を突き抜けて哲学なのでは?という振り幅。
そもそも〈AIロボット〉なんてあっさり短くまとめた単語が、どれだけのソフトウェアとハードウェアが包み込むんだという目眩。
人間である限りは決して知ることの出来ない世界だからこそ、想像が膨らみ続けるというか…膨らんでいるはずなのに何故か身近な世界というか。
そして、如何様に拡った世界を提示されても、読者である私には私自身が抱いている(認識している)世界でしかそれらを知覚することが出来ないというジレンマ。
そしてそして。誰もが思うことだけど、〈AIロボット〉という未知なる鏡で結局は人間のことを描いているんだなという無限ループ。
薄ぼんやりとしか認識出来てない自覚はあるものの。
AIやロボットたちを奴隷階級のように描いた世界が示すように、彼ら(?)に抱く恐怖と憧れがある限り読み続ける世界なんだと思います。
特に印象に残ったのは4編。
『エンドレス サード・Z・フセイン』小難しさを上回る爽快感。
『ソニーの結合体 ピーター・F・ハミルトン』ある意味、暗黒神話でもある。
『罪食い イアン・R・マクラウド』一つの終焉、新たな殉教。
『ロボットのためのおとぎ話 ソフィア・サマター』数多ある世界のおとぎ話。
他にも、
『もっと大事なこと サラ・ピンスカー』ちょっとした恐怖とともに安堵も感じる。
『人形芝居 アレステ・アレナルズ』ルビーがチャーミング。猫村さんイメージ。
『赤字の明暗法 スザンヌ・パーマー』藤子不二雄作品にもなりそう。
などなど。
『死と踊る ジョン・チュー』なんかも元ネタにちなんで、あのミュージカルネタがあるのかな?とかミュージカル好きにはニヤリとさせられる作品。
心が暖まったり震え上がったりと、分かり易い作品(あるいは、そう思わせてくれる作品)が好きなんだなという自覚はあります。
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ちなみに。
AI、という存在で真っ先に思い浮かぶのは「ガニメデの優しい巨人」に出てくる【ゾラック】。彼(彼?)の活躍で得た高揚感は忘れられない。
もう一つ浮かぶのは「2001年宇宙の旅」の【ハル9000】。映画終盤があまりにも感性と読解力を試される作品だったので、小説の方が分かり易い!と錯覚させてくれる作品。小説のハルさんは、なんだか可哀想だった。
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イアン・R・マクラウドといえば。
この人の「夏の涯ての島」早川書房が大好きなんですよ。表題作よりも「ドレイクの方程式に新しい光を」や「転落のイザベル」が印象的。
図書館で出会って、購入せねば!と思ったらすでに絶版という図書館あるある。
どっかで文庫本化していただけないものでしょうか。
追記:大好きなんですよ!と言いつつ数時間、名前を予測変換のマクドナルドのまんま載せていました。だいぶ恥ずかしい。