部屋の窓際

好きなものについて描いたり書いたり。

7月30日 読書メモ「鬼憑き十兵衛」


日曜日のメモ。
晴天。早朝、部屋に風を入れても一瞬の気休め。
最低限の用事を済ませた後は、だらだらと休日を過ごす。


朝。桃。ヨーグルト。トロピカルなグラノーラ
昼。鰻重。枝豆。ビール。
夜。白米。納豆。冷奴。茄子の味噌炒め。胡瓜の一夜漬け。

日中、あずきバー


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「鬼憑き十兵衛 大塚巳愛」新潮文庫
「妖ファンタスティカ」アトリエサード

伝奇小説が読みたくて手にした二冊。読了。

「鬼憑き十兵衛」は伝奇時代小説。後味軽やかな山田風太郎という感じ。
復讐譚、一種の剣豪小説なだけあって、普通の刺客から異能、異形の化け物まで次から次へと斬り結んで血煙、血の河、死屍累々。
それでもどこか軽やかなのは、文体とキャラのせいか。

父親を暗殺された少年(故あって隠し子)十兵衛による仇討ちが本筋で、そこに絡めて隣国島原の不穏な雲行きも混ざって草双紙趣味盛り沢山な展開。
大食漢の美貌の鬼、異国の美少女(せいれん)、眉目秀麗で一癖二癖ある若武者、転覆を伺う切支丹一派、正気失ってる細川の御隠居、土蜘蛛の妖女とその眷属など個性的な登場人物。
次々に起こる異変と修羅場と、合間にそっと置かれる人情味。
青くこっぱずかしいボーイミーツガールでもある。

人生の苦味や重みを求める人には少々物足りないかもしれないが、私は絵になりそうな場面の連続にワクワクした。娯楽伝奇小説。ビジュアル度高し。
終盤の展開は、どんな形であれ主人公が報われるのは心地良い。





「妖ファンタスティカ」は、書き下ろし十五篇のアンソロジー集。
『夢斬り浅右衛門 朝松健』いわゆる必殺。
草薙剣秘匿伝 秋山香乃』希少な飛鳥時代伝奇。古代史に欠かせない人物も。
『ころりの木壺 神野オキナ』テンポ良い奇譚と思いきや、終盤で牙が滴る復讐譚。
『妖しの歳三 新美健』幕末の魑魅魍魎をリアリストが叩っ斬る。
『血抜き地蔵 誉田龍一』油断したら肌が粟立つ。COVID-19前の発刊なのか。
『生き過ぎたりや 谷津矢車』傾奇者は、いつだって絵になる。
この辺りが好み。


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リアタイ大河。
魔人加藤の伊賀ダンジョンを家康一行が攻略、と思いきや服部党が報われるお話。
持てる力で頑張った人が報われるという、我々労働者に滲み入るお話。
ゲス上司(光秀さん)が最終的にギャフンとなる、我々労働者に滲み入るお話。

氏真や勝頼がかつて無いほどリスペクトされた代わりに、かつて無いほどディスられた感のある光秀。リスペクトといえば、穴山梅雪が家康守るための自己犠牲解釈。
家康を守るために家康の名を騙る人々と、己が名を名乗って家臣を守ろうとする家康と、己が名を偽って逃げ切ろうとする光秀。なかなか残酷なオチである。
結局、甲賀の人たちって親切な人たちだったのか。怪しさ満点だったけど。
正信は陽気ではあるが拗れていて、この人物の本音をすぐ見抜ける百地さんすごい。

大鼠ってしっかり者だし斜に構えてるけど、でもあの子ってかなり純粋な子なのよね、と見守りたくなる気分。
……「あの光秀さん」の娘がガラシャって、ちょっと気持ちの整理がつかない。