須永朝彦から思いつく単語といえば『吸血鬼』と『美少年』が競り合う。
あと、幻想文学系でよく見る名前、という印象。
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そんな人間が須永朝彦特集のユリイカを購入し、ごろごろと拾い読み。
情報量がみっちりあるのでとても一息に読み尽くせないが、高橋睦郎のインタビュー記事が印象に残る。
追悼も兼ねた特集号に載せるにしては、なかなか刺激的な回想が並ぶ。
高橋睦郎といえば、金子國義特集(KAWADE夢ムック)に寄せた文章も凄かった。
華々しい虚構を追悼に捧げたのかな?と思ってしまうほどの切れ味。
凡人が思い描く、若き日の戦友や悪友といった関係を一蹴。
当事者しか知らない魂の交流などという発想すらも、その当事者からすれば外野の理想を押し付けた厚ぼったい釉にしか過ぎない、とは思う。
ただ、好とか悪、憎を超えた餞は確かにあった。
誘惑者、とは最高の言葉ではないか。
それに比べると、今回のユリイカ記事はちょっとした苦味と甘さをぼんやりと感じる。エッセイとインタビューの違いもあるのかもしれないけれど。
何よりも両者の関係性の違い、むしろ感性(特性?属性?)の違いか。
過剰なくらいの才能、というのは何となく分かる気がする。
今回の特集号でもう一つ思い出したのが、中井英夫の特集(KAWADE道の手帖)に寄せた須永朝彦の文章。あれもだいぶ印象的だった。
当時、中井英夫初心者であり【この作家の文章はどんなものでも全部好き】という酩酊状態(今もだが)だった私には、須永朝彦に回想される中井英夫像は衝撃的ですらあった。
著作物と著作者は別のモノという分別はあったので、ショックというよりもゴシップ的興味を刺激された記憶。
今回のユリイカを読むと、「同族嫌悪」という言葉が想起されるのは短絡すぎか。
中井英夫とくれば次に連想されるのは塚本邦雄だが、まだそこまで読み進めていない。
追悼と回想の特集本を並べたら、複数の小さな物語の輪が閉じるのを見た感。
勝手な思い込みだけど。
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この特集を完読したら私の中の須永朝彦イメージがもう少し固まるのかもしれない。
それにしても、今回のユリイカ。
白地に黒、アクセントは金?の麗しい装丁で、手垢がつくのに罪悪感を覚える。