幕末から明治初期を舞台にした伝奇短篇集。日下三蔵編集。
登場人物を挙げてしまうと結末が解ってしまうが、その分かり切っている結末をアッと言わせるのが山風流なのだと思う。
そして軟弱な読者である私は、漂う無常観に毎回軽くダメージを受ける。
『からすがね検校』 一番ハッピーエンド。ピカレスクロマン。
『ヤマトフの逃亡』 無能に潰される有能。だがしかしそれだけか?
『おれは不知火』 全体に飄々として妙に呑気。そして、英雄とは。
『首の座』 烈士だ壮士だ殉教者だと喚くことへの一つの視点。
『東京南町奉行』 信念の人ではある。
『新撰組の道化師』 悲劇なのか喜劇なのか。ある種、豪傑の哀れ。
『伝馬町から今晩は』 人情噺のネタをことごとく叩き潰すような暗黒劇。
一話目のピカレスクハッピーエンド以外は、無常観というか、苦いものを噛み潰したような感覚があるのですが、山田風太郎の文章の美味さに舌鼓を打つ感覚も併走。
特にラストの『伝馬町から今晩は』は強烈すぎて、なんというかもう不幸を見ることを強要された不快感を通り越した快感。マゾヒストの快感ってこんな感じ?