部屋の窓際

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ラクガキ&読書メモ「ゆめこ縮緬」

出ずる

 

 

「蝶々殺人事件/横溝正史 角川文庫」に同時収録されていた『薔薇と鬱金香』の読後感が、あまりにも牧歌的な猟奇趣味(?)だったためか、続けて読んだ「愛と髑髏と/皆川博子 角川文庫」に打ちのめされる。

 

一足先に復活していた「ゆめこ縮緬皆川博子 角川文庫」が全編どれも陶然とする幻想群なら、こちらは現実との境界線から立ち上がるひりひりするような幻想。

「ゆめこ縮緬」に散りばめられた世界が、心地のよい地獄の湯に悩みも悔いもなく浸かっているとすれば、「愛と髑髏と」にかき集められた世界は、うずくまり牙を剥く寸前の鬱屈と言いますか。皮膚と肉のはざまをジワリと炙られるっていうか、肋骨の隙間の神経を引っ掻かれるっていうか。そんな経験ないけど。

『人それぞれに噴火獣』『舟歌』は読むのを止めたくても止められなかった作品。

『風』『丘の上の宴会』は痛みが軽やかさに昇華したようなホッとした作品。

 鈍くなった自分の感性をいたぶりたい時に大分効きそうな劇薬でした。

 

愛と髑髏と (角川文庫)

愛と髑髏と (角川文庫)

  • 作者:皆川 博子
  • 発売日: 2020/03/24
  • メディア: 文庫
 
ゆめこ縮緬 (角川文庫)

ゆめこ縮緬 (角川文庫)

  • 作者:皆川 博子
  • 発売日: 2019/09/21
  • メディア: 文庫