部屋の窓際

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読書メモ「ポー傑作選1、2」と雑談

 

 

 

 

「ポー傑作選1 ゴシック ホラー編 黒猫」

「ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人」

エドガー・アラン・ポー河合祥一郎訳 角川文庫

 

ポー作品は一通り読んでいるからと書店の本棚を素通りしていましたが、ここ数年で、海外の作品は翻訳者でだいぶ雰囲気が変わるということと、時代の変遷(研究の進化)で解釈も異なるということ、そもそも未熟な読者なので思い込みも多々あるということに気づいたので、数冊購入。

こちらは表紙にも惹かれて購入。

 

ちょっと長くなりますが、収録されてる作品を羅列。

 

ゴシック ホラー編は

『赤き死の仮面』

ウィリアム・ウィルソン

『落とし穴と振り子』

『大鴉 (詩)』

『黒猫』

『メエルシュトレエムに呑まれて』

『ユーラリー (詩)』

『モレラ』

『アモンティリャードの酒樽』

『アッシャー家の崩壊』

『早すぎた埋葬』

『ヘレンへ (詩)』

『リジーア』

『跳び蛙』

巻末に作品改題、数奇なるポーの生涯と年譜。

 

怪奇ミステリー編は

『モルグ街の殺人』

『ベレニス』

『告げ口心臓』

『鐘の音 (詩)』

『おまえが犯人だ』

『黄金郷 (詩)』

『黄金虫』

『詐欺_精密科学としての考察』

『楕円形の肖像画

アナベル・リー (詩)』

『盗まれた手紙』

巻末に作品改題、ポーの用語とポーの死の謎に迫る。

 

 

読み易い!

 

翻訳小説あるあるの一つに、文体が平易になるなどして読みやすくなる代わりに雰囲気が損なわれるといった場合もありますが、こちらは雰囲気も堅調。

そもそも文体が平易になっているわけでなく…文章としてこなれている感じ?

己の読解力を棚に上げて何様目線だという言い草ですが。

私の語彙力&読解力が及ばないゆえに、噛み砕くのに時間がかかる場合もある創元推理文庫版に比べると、するすると情景が頭に入ってくる感動。

 

恥ずかしながら、『メエルシュトレエムに呑まれて』の体験談の描写を初めて理解しました。今までは、とりあえず渦なんだな、と思っていたので…。

怪異を味わう前に晦渋な文章を堪能していた『アッシャー家の崩壊』も、淀みなく異常な空気を吸収。

この『告げ口心臓』は斬新。

『モレラ』『リジーア』『ベレニス』と、ポー作品の三大美女(?)も堪能。

 

巻末に各作品ごとの解題も読み応えあり。

読み易い!と言いつつ、さらっと読む行為を拒否するのがポーだと思い知らされる。

特に詩に関するものを読むと、やはりどの言語も音が重要なのだなあと思った次第。『大鴉』は、一度は英文の音と字を鑑賞するべきか。

『ポーの死の謎に迫る』も、一般に流布しているアル中説しか知らなかったので新鮮な謎解き。あの当時の情報伝達でこれだけ怪しげな真実が広がるなら、現在あっという間にフェイクニュースが広まるのも当然か。

 

 

ちなみに。

若干ケチをつけてしまったような感のある創元推理文庫「ポオ小説全集1〜4」「ポオ詩と詩論」。この五冊は手放せません。

一番初めに買ったポー作品。

 

文字ちっさ!と驚愕し、カチカチに硬く感じる日本語にしがみつく。

購入当初は、ポオの小説が全部あるんだ!という興奮と、あまり馴染みのないタイプの文体に酔っていたのではなかろうかと。今もか。

雰囲気に酔ってなんとなく理解したつもりでいるのは怠惰な私の責であって、馴染みのない語彙を拾い上げ調べ上げ、晦渋と感じる文体も何度も咀嚼すれば愉しめる、はず。

 

もう一度読み比べるのも一興。