部屋の窓際

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読書メモ「エンディミオンの覚醒」近辺

 

 

エンディミオン (上下)ダン・シモンズ酒井昭伸訳」 ハヤカワ文庫

エンディミオンの覚醒 (上下)ダン・シモンズ酒井昭伸訳」 ハヤカワ文庫 

 

世の中は「三体」ですが、ハイペリオンシリーズの三部と四部を読了。

面白かった!(晴れやかに)

率直に言えば、前二作の方が好きだけど、でも面白かった!

せっかく構築された科学的論理なんかさっぱり理解できてないけど、ありったけのイメージを掻き立てられる世界観に夢中で読了。

各惑星の描写が壮大かつ詳細。某局の世界遺産スタッフに撮影してもらいたい。

 

 

基本的に周回遅れの読書が多いので「ハイペリオン」と「ハイペリオンの没落」も五年ほど前にようやっと読了した次第。後編二作を読むのはかなり躊躇。

この文字の大海原に再びダイブするのかという戸惑い。というか、ビビり。

文字数も多いが詰め込んである要素も多いと実感したので、体力(脳筋?)がある状態でないと歯が立ちません。

読み始めたらあっという間でした。

 

 

乱暴に比較すると、「ハイペリオン〜没落」は、様々な場所で様々に織り上げられた物語という発火性のある織物を、ギュッと一箇所にまとめあげ派手に点火し発光放出。痺れるような興奮を四方八方に撒き散らす発散系。

エンディミオン〜覚醒」は断片を拾い集める航海譚と並行する暗黒譚(&殉教譚)。分岐点を越えると一気に救世主物語に変貌し、今までの伏線をとんでもないスピードで(少々強引に)回収していき、めでたしめでたしの一点へ終着する回帰系。

 伏線回収っていうか、巨大な機械でゴリゴリ巻き上げていった感あり。

  

文学哲学等に詳しくないので、諸々の要素を半分も味わえたか疑問ではありますが。

前二作が「デカメロン(の中に組み込まれた多数の物語形式)」や「新曲」の要素を、後編二作は「オデュッセイア」や「宗教裁判」「東洋哲学」、そして「ゴシックロマン」要素を感じました。

私には、ネメスはゴシックロマンの権化に見えます。

 

 

今作で惹かれるのはデ・ソヤ神父大佐と愉快な仲間。ネメス。氷の世界のグラウコス神父、そして巨悪だけどそうとも言い切れないルールドゥサミー枢機卿。 

 

複数キャラが主役の構成である前二作。中でもブローン・レイミアやカッサード大佐が好きだった私には、今回の単独主役のエンディミオンは眩しいくらいな成長型ヒーローキャラ。体はマッチョ!中身は少年!って印象。

ヒロインのアイネイアーが成熟&老成しているのでなお目立つ。

肉体的には突き抜けてタフなのに、精神面(というか色恋)は非常にナイーヴ。ガラスの十代か。「おい、もっと察しろよ!」と無言のシュプレヒコールを浴びせること多々ありましたが、肉体的にも精神的にも右往左往する過程があってこそまさに覚醒なんだな、と読了して少しばかり納得。それを考えると通過儀礼の要素もあったか。

 

ちなみに、全作通して気になる存在シュライク。

その正体がさっぱり分からないまま読了してしまったので、解説で提示された答えに「えー?!」と驚愕する私の読解力でした。

 

 

 

書影大好きマンなので、アマゾンさんから借りた書影を並べときます。

軽い気持ちで図書館で借り、結局古本屋で買い揃えたパターン。