積読本読了。
店頭に並んでいたのを突発的に購入したので、なかなかの積読期間。
どれだけ熟成。…蝉が幼虫からそろそろ地上に出るくらいか。
帯にこれ以上ないほど端的に要約されているように、【ジャズXカフカ『変身』の傑作連作短編】。それで間違いない。
不条理というよりSF的?スペキュレーティブフィクション寄りで。
敢えてジャンル分けするとしたら幻想…?。
色々な意味で伝説的な消えたサックスプレイヤー。
彼を参考にした小説、そしてそれを書いた小説家の「私」がその行方を辿っていく行程、その合間に付随される生物学的論文、ジャズ批評、都市伝説から発展する或るプレイヤーの伝説、不思議な手記、などによる短編集。
毛色の違う短編全てに、それぞれを繋げる数個のピースが散らばっている
「変態(昆虫学的意味で)」「気がかりな夢」「宇宙語」「虫樹」etc.
ここに記される虫の姿は先日の美しい鑑賞物たちではない。
できれば視界に入れたくない。目についた途端、生物的にシャットアウトせずにはいられないタイプ。虫どころか人間もなかなかに強烈。
暴力的なおぞましさが(失礼)、蜜のように光るグロテスクな魅力へと感じられる挿話。一種のカルト的な生贄を匂わせる挿話、淡々とレポートを進め、ぐるっと視界を転換されてすっと冷えるような挿話。
『虫王伝』『虫樹譚』『Metamorphosis』『変身の書架』が特に好み。
冒頭にそれぞれ挙げられているハロルド・ベイカー『チャーリー・パーカーの伝説』とフランツ・カフカ『変身』の一節が、低く流れ続ける音だったことに読了後気づく。
結局、成虫になれたのだろうか?